高信頼性RFケーブルは、防衛用途以外でも利用される

RF/マイクロ波ケーブルアッセンブリは、多くのシステムにおいて重要な部品であり、高周波信号の相互接続を支障なく提供するために不可欠である。

Jack Browne
技術記事寄稿者
Microwaves & RF Magazine


同軸ケーブルアッセンブリは、多くのRF/マイクロ波システムにおいて必須の、信号制御コンポーネントであるが、その必要性はシステム構築後になることが多い。防衛用の場合、ブルの耐久性は死活問題になり得る。通信や監視衛星などの深宇宙ミッションでは、ケーブルが故障することを想定していない。しかし、高信頼ケーブルおよびコネクタが長寿命であるという要求は、防衛や航空宇宙用とは限らない。商用および工業用のユーザであっても、商業用通信や工業用製造システムのような用途に設置されるケーブルには耐久性を要求する。

どの高信頼RF/マイクロ波ケーブルを選択するかは、商業用、工業用、防衛用にかかわらず、システム設計の完成を左右するものとなり得る。しかし、ケーブルの各適用規格を調べ、すべての要求に適合させることは容易ではない。それぞれの用途において、信頼性がどのように定義されているかを理解し、それらが各RFケーブルアッセンブリにおいてどのように実現できるかを理解することが大切である。つまり、ある用途には特有の信頼性試験が該当するということである。

同軸RF/マイクロ波ケーブルは、商用または防衛通信機器における「1回限りの」相互接続から、ケーブルの位置や結線が絶えず変化するテスト系統におけるアプリケーションまで、様々な用途がある。

1. Low-loss cable assemblies such as these are often used for interconnections in high-reliability systems.

信頼性とはどのようなものか


信頼性は、製品の寿命期間にわたる3つの異なる故障率を用いて、製品の故障および寿命に関して、時間の関数として「バスタブ」曲線の形状で定義されることが多い。最初に故障が減少していき、続いて一定の故障期間となる。その後、製品の摩耗段階で故障が増加する高信頼性ケーブルは 、後続の系統故障の原因がケーブルコネクタの損傷とならないよう、バスタブのカーブとケーブルアッセンブリの寿命を考慮し、故障を最少回数になるよう設計され、組み立てられるものである。

ケーブルアッセンブリの信頼性とは、アプリケーション上の全寿命にわたって、性能の劣化や喪失がない状態で、期待される性能水準を保つことである。ケーブルアッセンブリが、推奨される最小値よりも小さい曲げ半径で使用されたり、定格最大値よりも高いRF/マイクロ波電力を印加されたり、動作温度範囲を超える温度で動作させるなど、仕様上の機械的、電気的または環境的制限値を超えると、故障が予想される。同軸ケーブルアッセンブリの信頼性の規定は、経時的に許容される性能劣化に対して限界が設定されると、より複雑になる。性能は、挿入損失、VSWR、および位相安定性などの異なるパラメータによって記述されることがある。

ケーブルアッセンブリの信頼性は、1または2つの性能パラメーターで厳格な管理が規定されることもあるが、包括的なパラメータで規定される場合もある。高信頼ケーブルアッセンブリに必要な公差は、アプリケーションによって異なる。例えば、ある温度や周波数域での挿入損失の変動が±2 dBの場合、±3 dBの挿入損失安定性を必要とするシステムに対しては、優れた信頼性を持つが、±0.5 dBの挿入損失安定性を必要とするシステムでは、故障に至る可能性がある。同軸ケーブルアッセンブリの信頼性は、アプリケーションとその動作環境に大きく左右される。

米軍規格

防衛用及び航空宇宙用のケーブル及びコネクタの信頼性は、MIL-DTL-17同軸ケーブル及びMIL-PRF-39012 RF同軸コネクタ といった、多くの異なる米軍用規格によって規定されている。MIL-DTL-17は、様々な用途、使用環境、各種同軸ケーブルの仕様を網羅している。錫、銀被覆銅、銅クラッドスチール導体など、芯線の材質や寸法に特に重点を置いている。
防衛用および航空宇宙用の同軸コネクタは、MIL-PRF-39012に含まれる基準を満たさなければならないことがしばしばあり、この基準は、米国国防総省(DoD)のすべての部署および機関で使用されている。これには、防衛用のフレキシブルまたはセミリジッドケーブル用高周波コネクタを特定する全般的な要求事項とテスト方法が規定されており、現場保守用コネクタまたは現場用ではないコネクタなど、さまざまなタイプに適用される。

これらのコネクタの信頼性については、重要な接続部材質とメッキ、例えば、PTFE誘電体材質、本体黄銅、銀メッキの厚さ、鋼のパシベート処理、および中心導体の金メッキ厚の定義などがある。MIL-PRF-39012は、防衛用等級コネクタ製造におけるリサイクル、回収、環境に優しい材料の使用についての規定、およびコネクタが適切に嵌合されたかの目視によるチェックの方法も詳述している。

防衛宇宙用を超えて


高信頼性ケーブルアッセンブリの用途は、単に防衛システムやサブシステムだけでなく、商業用、工業用、および治療のために電磁(EM)エネルギに依存する医療用電子システムにも及ぶ。これらは、戦場や宇宙空間など、出入りが制限される可能性のあるシステムであり、故障費用(ケーブルであっても他の部品であっても)は法外なものである。

多くの場合、無線セルラ通信網などにおいては、サービスを維持するために信頼性が重要となる。信頼性の欠如は、高周波ネットワークにおけるサービスのコストロスにつながる恐れがある。高信頼ケーブルアッセンブリは、測定設備や自動テスト機器(ATE)システムなど、高周波部品の出荷前性能検証のために使用されることから、測定のシステムの精度や信頼性が、品質保証の一部となるような、性能低下が許容できないアプリケーションで利用されることになる。

衛星等宇宙関連装置における用途においては、ケーブルアッセンブリは、それらの用途において必要とされる高信頼性を保証するための、広範な環境下における機械的電気的試験を特徴とする、いわゆる「Sレベル」要求事項として規定される場合がある。S レベルの信頼性は、テストされた製品で可能な限り最高レベルの信頼性とみなされる。それは、通常、すべての温度範囲や衝撃および振動範囲といった環境条件下で、同軸ケーブルアッセンブリのように、コンポーネントを動作させてテストする環境下において寿命テストを行うことによって達成される。

Sレベルのケーブルアッセンブリが提供する信頼性の水準は、他のどの軍事規格を凌駕するものであるが、そのような不具合のないケーブルを製造するために要求される広範な工程と試験に、価格を設定できないというわけではない。このような高信頼性ケーブルの価格設定は、標準等級ケーブルの場合よりもかなり高額であるが、宇宙関連のアプリケーションにおける故障の費用と比較すると、Sレベルの信頼性への投資はそれに値するものがある。そこで、どうすればより信頼性を上げられるのかという疑問が生ずる。それは、製品設計、材料の選択、適用されるプロセス、およびそれらのプロセスで維持されるプロセス管理のレベルを含むいくつかの要因が挙げられる。

条件に耐える設計

先に述べたように、ケーブルアッセンブリのアプリケーションと動作環境は、その信頼性に大きな影響を与える可能性があり、最適な長期的な信頼性を得るために、アプリケーションと動作環境に特化して高周波ケーブルを設計する必要がある。たとえば、適切な電磁波シールドがないケーブルアッセンブリは、監視やレーダ受信など、高感度のシステムで妨害を受けやすくなる。

最近応用されている、監視用無人航空機(UAV)のような高周波ケーブルアッセンブリは、温度、衝撃、振動のような環境仕様に対する要求が厳しく、標準等級のケーブルアッセンブリを装備すると故障する可能性がある。同時に、UAV搭載部品を軽減する必要があるため、UAV用のケーブルアッセンブリは、着陸の衝撃と離陸時に要求される耐久性を達成しながら、できるだけ小型で軽量でなければならない。

常時可動させるケーブルアッセンブリなど、アプリケーションや必要性に応じて、目的に即した材料 (用途に適した導体、遮蔽、被覆物材料など)を使用してケーブルアッセンブリを設計する必要があります。高伝導金属や低損失絶縁材などの高品質な素材は、ケーブルアッセンブリにおいて優れた性能を発揮できますが、それ自体では高信頼性は確保できません。

コネクタ、ケーブル、およびケーブルとコネクタの接続部分は、過酷な使用条件下で高信頼性を維持するように十分に設計されなければならず、それらの異種の材質および部品をケーブルアッセンブリに組み立てる製造工程は、十分に管理され、再現性が必要である。さらに、ある用途用へケーブルアッセンブリを製造する際に特殊な材料を使用する場合、メーカはサプライ・チェーンを厳格に制御し、必要な材料の十分な在庫を維持しなくてはならない。

試験段階

試験は、部品製造の「付加価値のない」部分と言われるが、製品の信頼性を向上させるためには、試験と測定の結果が重要である。製品について測定を行わないと、その製品がどれだけ信頼できるか分からない。高信頼性ケーブルアッセンブリのメーカは、信頼性の向上に常に取り組んでいる。これには新しいアイデア、新しいプロセス、実験が必要である。そのための試験は重要であり、新しいプロセスが有益か、または気づかず問題をおこしているかを判断するのに役立つ。

2. BMA connectors have long been used for high reliability cable assembly applications where blind mating and RF performance are critical.

典型的な計測法としては、屈曲および高温における挿入損失、リターンロス(VSWR)、および位相安定性、およびテスト中のケーブルアッセンブリに適した周波数域を有するマイクロ波ベクトルネットワークアナライザ(VNA)の周囲に構築された熱サイクルがある。測定データの解析により、ケーブルアッセンブリの信頼性について多くのことが明らかになる。また一方で、各段階のテストデータの結果は、製造工程の能率と有効性について検討する機会を提供する。特にセミリジッドおよびフレキシブルのケーブルおよびTNC、BNC、N型、SMA、およびBMAコネクタなど、RF/マイクロ波同軸ケーブルとコネクタのすべての組合せに対して、できるだけ高い信頼性を提供する製造工程を作ろうとする場合に役立つ。

定期的な測定と解析は、高信頼性部品を構築するための重要な工程である。また、3次元(3D)電磁気(EM) シミュレーションソフトウェアを用いて、より高い信頼性を備えた新しいコネクタやケーブル構成を開発し、より高い周波数での性能を向上させるために測定は不可欠な役割を果たす。商業用、工業用、防衛用のケーブルやコネクタを選定する際、ミリ波周波数帯まで、より低い損失を求めるようになっている。最新のコンピュータシミュレーションソフトウェアツールを使用することにより、高信頼性アプリケーションに必要とされるような、さまざまな動作条件下での新しいコネクタ、ケーブル、およびその接続構成を実験的に調べることができる。高性能テスト系と信頼性の高いテスト資料を入手することで、それらのコネクタとケーブルを検証し、洗練するのに役立つ。

商業用、工業用、防衛用の高周波、マイクロ波、ミリ波帯の電子機器への利用が高まることにより、RF/マイクロ波ケーブルアッセンブリなどの高周波部品メーカーに信頼性の高い商品を要求することになり、その結果さまざまな使用環境に適用されつつある。RF/マイクロ波コンポーネントに起因する無線基地局の故障は、しばらくの間、その基地局の周辺の通信・サービスの不足につながる可能性があるが、たとえその原因が同軸ケーブルであったとしても、最終的には代替部品で修理できる。基地局において信頼性の実績のあるケーブルアッセンブリを使用することで、ケーブルの故障による修理の必要性を最小限に抑えることができる。

3. Semirigid cable assemblies with SMP connectors are often used for high-reliability applications requiring weight reduction and high RF isolation.

それとは対照的に、軌道周回衛星のケーブルアッセンブリが故障した場合、修理は容易ではない。衛星を修理することは難しくコストがかかるため、Sレベルの資格認定に合わせて設計、製造、試験されたRF/マイクロ波同軸ケーブルが求められる。これは真に最先端の技術を必要とするアプリケーションである。これらは、故障の想定ができないケーブルアッセンブリであり、ケーブル定格の保証や追加認定のコストが、ケーブル故障のコストと比較して、問題にならない場合に選択されるだろう。

本寄稿は、 Microwaves & RF へ掲載されたものです。