信頼性とはどのようなものか
信頼性は、製品の寿命期間にわたる3つの異なる故障率を用いて、製品の故障および寿命に関して、時間の関数として「バスタブ」曲線の形状で定義されることが多い。最初に故障が減少していき、続いて一定の故障期間となる。その後、製品の摩耗段階で故障が増加する高信頼性ケーブルは 、後続の系統故障の原因がケーブルコネクタの損傷とならないよう、バスタブのカーブとケーブルアッセンブリの寿命を考慮し、故障を最少回数になるよう設計され、組み立てられるものである。
ケーブルアッセンブリの信頼性とは、アプリケーション上の全寿命にわたって、性能の劣化や喪失がない状態で、期待される性能水準を保つことである。ケーブルアッセンブリが、推奨される最小値よりも小さい曲げ半径で使用されたり、定格最大値よりも高いRF/マイクロ波電力を印加されたり、動作温度範囲を超える温度で動作させるなど、仕様上の機械的、電気的または環境的制限値を超えると、故障が予想される。同軸ケーブルアッセンブリの信頼性の規定は、経時的に許容される性能劣化に対して限界が設定されると、より複雑になる。性能は、挿入損失、VSWR、および位相安定性などの異なるパラメータによって記述されることがある。
ケーブルアッセンブリの信頼性は、1または2つの性能パラメーターで厳格な管理が規定されることもあるが、包括的なパラメータで規定される場合もある。高信頼ケーブルアッセンブリに必要な公差は、アプリケーションによって異なる。例えば、ある温度や周波数域での挿入損失の変動が±2 dBの場合、±3 dBの挿入損失安定性を必要とするシステムに対しては、優れた信頼性を持つが、±0.5 dBの挿入損失安定性を必要とするシステムでは、故障に至る可能性がある。同軸ケーブルアッセンブリの信頼性は、アプリケーションとその動作環境に大きく左右される。
米軍規格
防衛用及び航空宇宙用のケーブル及びコネクタの信頼性は、MIL-DTL-17同軸ケーブル及びMIL-PRF-39012 RF同軸コネクタ といった、多くの異なる米軍用規格によって規定されている。MIL-DTL-17は、様々な用途、使用環境、各種同軸ケーブルの仕様を網羅している。錫、銀被覆銅、銅クラッドスチール導体など、芯線の材質や寸法に特に重点を置いている。
防衛用および航空宇宙用の同軸コネクタは、MIL-PRF-39012に含まれる基準を満たさなければならないことがしばしばあり、この基準は、米国国防総省(DoD)のすべての部署および機関で使用されている。これには、防衛用のフレキシブルまたはセミリジッドケーブル用高周波コネクタを特定する全般的な要求事項とテスト方法が規定されており、現場保守用コネクタまたは現場用ではないコネクタなど、さまざまなタイプに適用される。
これらのコネクタの信頼性については、重要な接続部材質とメッキ、例えば、PTFE誘電体材質、本体黄銅、銀メッキの厚さ、鋼のパシベート処理、および中心導体の金メッキ厚の定義などがある。MIL-PRF-39012は、防衛用等級コネクタ製造におけるリサイクル、回収、環境に優しい材料の使用についての規定、およびコネクタが適切に嵌合されたかの目視によるチェックの方法も詳述している。
防衛宇宙用を超えて
高信頼性ケーブルアッセンブリの用途は、単に防衛システムやサブシステムだけでなく、商業用、工業用、および治療のために電磁(EM)エネルギに依存する医療用電子システムにも及ぶ。これらは、戦場や宇宙空間など、出入りが制限される可能性のあるシステムであり、故障費用(ケーブルであっても他の部品であっても)は法外なものである。
多くの場合、無線セルラ通信網などにおいては、サービスを維持するために信頼性が重要となる。信頼性の欠如は、高周波ネットワークにおけるサービスのコストロスにつながる恐れがある。高信頼ケーブルアッセンブリは、測定設備や自動テスト機器(ATE)システムなど、高周波部品の出荷前性能検証のために使用されることから、測定のシステムの精度や信頼性が、品質保証の一部となるような、性能低下が許容できないアプリケーションで利用されることになる。
衛星等宇宙関連装置における用途においては、ケーブルアッセンブリは、それらの用途において必要とされる高信頼性を保証するための、広範な環境下における機械的電気的試験を特徴とする、いわゆる「Sレベル」要求事項として規定される場合がある。S レベルの信頼性は、テストされた製品で可能な限り最高レベルの信頼性とみなされる。それは、通常、すべての温度範囲や衝撃および振動範囲といった環境条件下で、同軸ケーブルアッセンブリのように、コンポーネントを動作させてテストする環境下において寿命テストを行うことによって達成される。
Sレベルのケーブルアッセンブリが提供する信頼性の水準は、他のどの軍事規格を凌駕するものであるが、そのような不具合のないケーブルを製造するために要求される広範な工程と試験に、価格を設定できないというわけではない。このような高信頼性ケーブルの価格設定は、標準等級ケーブルの場合よりもかなり高額であるが、宇宙関連のアプリケーションにおける故障の費用と比較すると、Sレベルの信頼性への投資はそれに値するものがある。そこで、どうすればより信頼性を上げられるのかという疑問が生ずる。それは、製品設計、材料の選択、適用されるプロセス、およびそれらのプロセスで維持されるプロセス管理のレベルを含むいくつかの要因が挙げられる。
条件に耐える設計
先に述べたように、ケーブルアッセンブリのアプリケーションと動作環境は、その信頼性に大きな影響を与える可能性があり、最適な長期的な信頼性を得るために、アプリケーションと動作環境に特化して高周波ケーブルを設計する必要がある。たとえば、適切な電磁波シールドがないケーブルアッセンブリは、監視やレーダ受信など、高感度のシステムで妨害を受けやすくなる。
最近応用されている、監視用無人航空機(UAV)のような高周波ケーブルアッセンブリは、温度、衝撃、振動のような環境仕様に対する要求が厳しく、標準等級のケーブルアッセンブリを装備すると故障する可能性がある。同時に、UAV搭載部品を軽減する必要があるため、UAV用のケーブルアッセンブリは、着陸の衝撃と離陸時に要求される耐久性を達成しながら、できるだけ小型で軽量でなければならない。
常時可動させるケーブルアッセンブリなど、アプリケーションや必要性に応じて、目的に即した材料 (用途に適した導体、遮蔽、被覆物材料など)を使用してケーブルアッセンブリを設計する必要があります。高伝導金属や低損失絶縁材などの高品質な素材は、ケーブルアッセンブリにおいて優れた性能を発揮できますが、それ自体では高信頼性は確保できません。
コネクタ、ケーブル、およびケーブルとコネクタの接続部分は、過酷な使用条件下で高信頼性を維持するように十分に設計されなければならず、それらの異種の材質および部品をケーブルアッセンブリに組み立てる製造工程は、十分に管理され、再現性が必要である。さらに、ある用途用へケーブルアッセンブリを製造する際に特殊な材料を使用する場合、メーカはサプライ・チェーンを厳格に制御し、必要な材料の十分な在庫を維持しなくてはならない。
試験段階